故郷、北の大地で没した男
もうすぐ親父の一周忌です。
(なにと比べていいかわからないので)言うほど複雑ではないかもしれないが、ふつうの関係ではなかったため(詳細は省く)、しかも突然の死だったため、僕は父の死に向き合えずにいた。葬儀でも「絶対に泣かない」と決め、泣かなかった。
仕事人としては尊敬できるが、父としては反面教師で生きてきた。ずっと、ずっと。
だけど、ここ数日、親父の存在を感じる。
親父には、褒められたことがない。いつも、お前はダメだなぁ、と言われて育った。
良い大学、良い会社、に行っても決して褒めてくれなかった。なにかにつけて僕を罵倒した。
なのに、ここ数日、親父に褒められたこと、いや、正確には褒められたわけじゃないんだけど、親父の「笑顔」を思い出す。くしゃくしゃの笑顔を。
小学校一、二年生のときが僕のサッカー選手としてのピークだった(はやっw)。四年生の試合に出たりしていた。フォワードだったから「後藤にボールを集めろ!」と監督が言っている。
だけど僕の直接の記憶にそれはなく、記憶にあるのは、親父が酔っ払って、『達哉が前にいると監督が「後藤にボールを集めろ!」って言うんだよ』と、嬉しそうにしてたよ、と言ったおばあちゃんの話だ。
見てないけど、クシャッと笑う、その顔がなぜか今、蘇る。。
続いて、これは直接の記憶。
最近、やたら寿司を食いたくなる。カウンターで。小さい頃、寿司職人になりたい時期があった。父は「達哉がはじめてなりたいと言った職業が寿司職人で、それを聞いたときは嬉しかった」と言った。
僕は漫画『将太の寿司』を読んでいて、なんとなく思っただけだけど。
父は、漫画が好きだった。
寿司職人は仕事を通じて、自己を表現する。アーティストであり、エンターティナーだ。いま、目の前にしてむしろ当時よりリアルにリスペクトをするし、僕も寿司とは違う道だか、そんな生き方をしたい。今ではそう思っている。
そんなことを思い出させてくれる、思い出させようとする父に、未だに僕は向き合えずにいる。
良い思い出は、小さい頃の記憶にしか、ない。
だけど、前よりはちょっと、近くに感じることができつつある。
そんな「父」との関係を、僕も「父」として焦らず、進めて行こうと思う。
俺は息子を愛してるし、絶対に褒めてあげたい。
不器用なだけで、親父も本当はそう思いたかったんだ、と、今ではわかる気がする。